新年度もすっかり通常営業。
何事もなかったようにまた始まるのだ。
ガッコには何とか来られるけど、教室に入るのはちょっとな、という生徒さんがいる。
そういう生徒さんには「別室登校」という措置が取られることがよくある。
保健室や相談室、場合によっては空き教室なんかで自習したり、空いてる先生に勉強を見てもらったりするのだ。様子見ながら、教室の方に行ってみたら?なんてことを時には言ってみたりもする。どっちかと言うと言わないことの方が多かったりするのだが。
私がお仕事に伺った時に別室登校の生徒さんがいて、それがまた顔見知りさんだったりすると、「じゃあ給食一緒に食べますか」ってな話になることもある。私がいる相談室で、どうでもいい話をしながら飯を食うのである。
生徒さんの分は、その子と仲のいい生徒だったり、担任の先生が持ってきて下さる。
私の分は職員室に用意されているので、自分で取りに行って、相談室まで持って行く。
「なんで2枚あるんですか」
別室登校の生徒さんの給食を持って来てくれた生徒は、私の給食のトレイを見て、ちょっと怒ったようにそう言った。職員室の給食の支度をして下さる事務の方のご厚意により、私の給食は超がつくほどの大盛りになっていることが多い。麺であれば2玉、果物なら2個。もう育ち盛りの若者ではないので食えば食うほど横にしか成長しないのだが、有難くいただいている。また、さすが学校給食。栄養のバランスは抜群に取れているので、日ごろ不足しがちな栄養素をここぞとばかりに補充させてもらっている。
「ああ、コロッケね」
私の目の前のお皿には、コロッケが2枚載っている。
「あたしたちなんて、1枚ずつなのに」
食べ物の恨みはなんとやら。よく学生さんたちからは、このような悪意のこもった視線を向けられる。いや、別に頼んでるわけでもないし。コロッケ一つで、そんなに睨まなくても。
「それに、他のも」
カップの中のポトフは、あまりにも具材を山盛りにし過ぎたため、ただの山盛り肉じゃが(肉抜き)にしか見えない。なんか、他の先生方に配って余った分全部私に回してませんか?
ともあれ、ここはひとつ軽口でも叩いて、話を有耶無耶にするべきであろう。
「いやあ、何て言うの?人徳?人徳がありすぎるから、山盛りにされちゃうのよ」
腕を組んで、ふんぞり返ってみた。
悪意のこもった眼に、更なる悪意の輝きが。
あれ?
「ふうん、人徳、ねぇ?」
つい、と人差し指がこちらに延ばされる。
「その、人徳っていうのは」
徐々に近づいてくる指先は、胸の前で組まれた腕をかいくぐるように――。
ぷに
「ここに詰まっているんですかねえ?」
ぷにぷにぷにぷにぷに・・・
とお腹を突っつかれました。
大人としての威厳も何にもねえ。
お恥ずかしいったらありゃしない。
ええと、がんばって体重落とすぞー。
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