最近、鼻の調子が良い。
というか、物心ついてからこちら、良かったためしがなかったのだが。
アレルギーだったか鼻炎だったか、いつもグズグズしていて、結構長い間病院に通ったりもしていたのだけど。
結局あんまり改善しないまま、現在に至る。
周囲の人には不快を与えたりすることもあるだろうけど、本人にとってはまあ、それが普通の状態だったし、鼻をかむという面倒と折り合いをつければどうということもない。
他に困ることと言えば、においが全く分からないことぐらいか。
よほどキツイにおいであれば流石に分かるが、微かなにおいの違いなどはまるで分らない。
「これさあ、まだ食べられるかな?」
「におい嗅いでみれば?」
「・・・・わかんない」
「・・・・食べてみれば?」
「うう、それはそれでコワイ」
なんてやり取りを、何度繰り返してきただろう。
当然、味の違いについてもたぶん他の人よりは随分と鈍感なのではないだろうか。
視覚と聴覚に関しては人並程度はあるようなので、それはそれでいいか、とノンキに暮らしてた。
ところが、だ。
最近、ほんの少しだけどにおいがわかるようになってきたのだ。
スーパーですれ違った別嬪さんの香水だとか、いつもの焼き鳥屋で新しく導入されるらしい「カレー風味だれ」のにおいとか、今までなら全く感じなかったにおいが感じ取れるようになってきたのだ。
理由はまったく不明なんだけれど。
・・・どっかに腫瘍でもできてんじゃないのか?腫瘍が神経を圧迫して云々、とか。
いやまあ、縁起でもないことはおいといて。
へえ、と思った。
ほんの少しでもにおいが分かると、ずいぶんと世の中は立体的に感じられるんだねぇ。
先天盲だった人が見えるようになると、もしかするとこんな風に新鮮に感じるのかもしれない、とか書くとさすがに大袈裟か。
ただまあ、視覚や聴覚はリアルタイムの情報源としてはとっても優れているんだけど、過去にそこで何が起きたのか、どんな人がいたのか、という情報に関しては圧倒的に嗅覚が有利である。
男性なのか女性なのか、若いのか年寄りなのか、そこに残るにおいってのは結構な情報源なんですね。
においが帯になって残ってるなんて、知らんかったよ。
犬ってのはそうやって世界を認識してるんだろうね、きっと。
大多数の人がそうであるように、自分のにおいってのはやっぱりよく分からないのだけど、自分の部屋のにおいは、なんとなく分かってきた。
本屋、っていうか古本屋のにおいだ。ブックオフとかみたいな新古書店の消臭剤のにおいじゃなく、もっと古くからあるような古本屋のにおい。
う、もしかして、カビのにおい?
あー、そいえばこのにおいが強すぎる新古書店、半年で潰れたっけ。
もしかすると、こういうのはある種「破滅のにおい」とかだったりするんでしょうか。
最近、蔵書(笑)の縁が変色しつつあるような・・・。
せっかく居間をきれいに保ててんだから、もうひと部屋の方も何とかキレイにしなきゃー。
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