夏休み前のお仕事が一区切りついた。
講師仕事はまだちょっとあるし、塾講師のお仕事は夏期講習という大きな山があるからのんびりできる、ってこともないのだけど。
お仕事先でいつもお世話になっていたある先生が、期間満了ということで退職される。
私がお会いできるのは、夏休み前の最後の勤務日まで。
どこの馬の骨か良く分からないワタクシなんぞを、有難いことに何度も使って下さった。そのお陰で現在のお仕事が成り立っていると言っても過言ではない。
帰るまでにキチンとご挨拶しなきゃ、でも忙しそうだな、と様子を伺っていたのだが。
放課後になると、卒業生が続々とその先生を訪ねてくる。中には、花束を持った子までいる。
うわー、本当にみんなに愛されてたんだなぁ。
その先生は来客の応対や日常業務、まとめておかなきゃいけないことなど色々あるのだろう。尋ねてきた卒業生らの相手をし続けるというわけにもいかないみたいだ。その先生の仕事場の隣にある私の仕事場は、何となく卒業生らの待合場所のようになってしまった。いやまあ、仕事が詰まってるわけでもないから、問題ないけどね。元気そうな顔を見れたのは嬉しいし。
卒業生の一人。
どうも彼女は聞き取りに問題があるようで、滑舌の悪さには定評のある私と組み合わせるとちっとも話が進まない。
「え?おせち屋?」
「誰がンなこと言った。お寿司屋だ、お・す・し・屋!」
「ああ!」
「大体何よ、おせち屋って。年に一回しか仕事しねぇのか」
「それで1年分稼ぐって言うか・・・」
「あー・・・それもいいかも知れないねぇ。一年の稼ぎすべてをカーニバルに賭けるブラジル人みたいで」
「枕草子?」
「ブ・ラ・ジ・ル・じ・ん!」
仲良しな二人。
諸般の事情で学校は別々になっちゃったけど、今も仲良しで用も無いのによく会ってるとか。
「ふーん。ガッコも楽しそうだね。青春してんじゃん」
『ど・こ・が!!』
おおう、ハモった。
「ウチの学校なんて、全然楽しくないよ!」
「ウチだって、スカート短くすんのに折り返した跡があるだけで反省文だよ!」
「~なんて、××なんだよ!」
・・・・・・・
あのなあ、本当にヤなとこだとなあ、人は段々鬱々と壊れてくんだよ。
システムに不満を言い出したら、そのゲームハマる一歩手前なんだ、って「レベルE」でやってたの知らんのか。知るわけねえか。
連中が卒業する前のころにもどったみたいだなー、と思ってたら携帯に着信が入ってるのに気がついた。
登録してない番号からだ。
仕事中だけど、業務時間は終わってるし、まあいいか、と取ってみる。
「ティーチャー!オレ、誰だか分かる?」
んあ?私のことをそんな風に呼ぶのは、塾の教え子の中でも極少数。
てか、現役の教え子ではいない。
こっちも卒業生だ。
卒業生に縁のある日だなあ。
「U田くんか!」
「そうです!今、家に帰る途中ティーチャーの車見たから、追いかけてみた!」
「ちょっと待て、オレ今、そっから車で1時間ぐらいかかるトコにいるぞ!」
「うん!違ったみたい!」
ええと、君もう大学生だよね。ナンだってそんな小学生みたいなマネを。
「オレ留学から帰ってきてさ、ティーチャーにお土産買ってきたのにティーチャー引越しするって聞いたから」
ええと、君、帰ってきたの、もう半年以上も前だよね?
いや、嬉しいんだけど。餞別も渡してねえのに、悪いなあ。
「引っ越す前に、渡しに行くから!」
おお、楽しみにしてるよー。
えーと。
退職される先生の愛され方とは方向性はやや違うような気がしないでもないのですが、まあ楽しいからいいや。
PR