前回、わざわざ「昼の部」と書いたからには、当然夜の部もあるのである。
いや、流石に中学生と夜中に遊ぶわけもなく、もっと前の教え子、既に高校卒業してるメンツである。
先日、「天下大将軍」をお土産にくれた青年、Zくんからまたウチで遊びたい、と言われていたのだ。
・・・ウチ、ねえ。
根っからのグータラな上に「忙しい」という大義名分の下、最後に掃除をしたのは何か月前?ってな部屋である。もちろん最低限のゴミ出しぐらいはしていたが、それこそ焼け石に水ってものである。
とにかく、汚い。
人類の住む空間かどうか怪しいくらいである。
掃除というレベルをはるかに超え、既にSFで言うところの、生物が住めない惑星を地球の環境に似せるために行う大規模工事、テラフォーミングが必要なレベルかもしれない。
そんな部屋である。
ボーリングをした中学生と別れ、塾長と少し話し込み、ちょっとここでは書けないようなお話をいただき、家に帰ってひー疲れた、と寝床に横になったが最後、すやすやと眠りこんでしまう。
・・・やべっ!
と目を覚ましたのが2時間後。
もそもそと部屋の片づけを始める。
ふむ、作戦を立てよう。
どう考えても、二部屋とも片付けるのは不可能である。
であれば、テレビのある居間の方を集中してキレイにすべきであろう。
そうすれば、この床一面に積み上がったマンガをどこに納めるべきか、考えなくて済む。
おお、これだ!
一般的には「右にあるものを左にやっただけ」とも呼ばれるが、まあ緊急手段だ。
床の本を、サイズ別に分けながらどんどんソファーの上へ。
床が見えたとこで掃除機。
ああ、またスイッチが固くなってるよ。
使わないと、あっという間にグリスが固まるんだよな。
ドライバでスイッチ部を分解、数回動かして組み直し、スイッチオン。
・・・えーと。
まあ確かに、掃除はしてませんでした。
ウチの掃除機は安物で、パゥワーも大したことないです。
2、3往復させただけで、フィルタが目詰まりって!吸引力低下って!
ほんの数畳の床を掃除するのに、十数回のファイルタ掃除って!
ソファーの上に積み上げた漫画を別室に移し、メールを打つ。
あー、始めてから4時間で、やっと一部屋って・・・。
この日来たのは3名。
Zくん。大学一年生。高校生の時、勉強を教えていた。先日までKoreaへ留学してた。
Wくん。浪人生。中学生の時から高校にかけて、勉強を教えていた。現在浪人生。来年も浪人生。
Kくん。専門学校生。中学生の時勉強を教えていた。よくウチにマンガを借りに来る。
全員同じ中学で、同じ部活をやってて、今でもつるんで遊んでるらしい。
たまに走り込んだりもしてるらしい。
若い喃。
Zくんの帰国祝いも兼ねて、近くでハンバーグを食う。
それぞれの近況を聞く。
てか、君らめちゃめちゃいい携帯使ってんのな!
で、お菓子とジュースを買いこんでウチへ移動。
「のんT(私のことだ)、また本増えてないですか?」
「あー、うん、確実に。で、今日は何すんの?」
「JoJoの百人一首です!ラジカセないですか!」
あー、噂には聞いていたけど。
CDラジカセなんて、ウチ無いよ。
「じゃ、PS2でやりましょう。ランダム再生無いけど」
近所に住むKくんが、自宅からPS2を持ってくる。
ごめんねー、ウチにゃスーファミとNewファミコンとサターン(借り物)しかないのよー。
JoJoの百人一首とは!
作中の名場面・名セリフを前半だけ聞き、後半の書かれたフダを取るというものであるッ!
てかほとんど文字だけだから、地味なことこの上ない。
読み手もオッサン声一人だけだし。
擬音もその人やってるし。
床一面に、札を撒く。
・・・粘着テープで床を念入りにコロコロしといてよかった、と思った瞬間である。
ネタは第1部~3部と、メジャーなところから集められてるらしい。
既に何度か、ZくんWくん、そのほかの友達と何度かやったところ、いずれもZくんが圧勝しているらしい。そういや、好きだったよね、君。突然本屋にいるオレに電話してきて、文庫版を買ってこさせられたこともあたっけ。この歳でパシリやらされるとは思わなかったよ。
さて、結果である。
4位 Kくん。そもそも、JoJoはあんまり読んでなかったらしい。古いのは知らんか、やっぱ。
3位 Wくん。君、なんでそんなにDio様がらみの札取んのに燃えてるの?終いに「オレがDioだ!」とか言い出すし。受験がキミをそこまで追い込んだのか・・・。
2位 オレ様ちゃん。さすがに持主のZくんには勝てなかったけど、大好きな第2部を中心にそれなりの枚数を取る。他にも、対切り裂きジャック戦でツェペリさんがJoJoに教えた戦いの心得の札もしっかりゲット。当時本気で覚えたんだよなー。まだ記憶に残ってたよ。
1位 Zくん。一通り読み終わるまで手を出さない、とハンデを付けてなおトップの枚数。いやまあ、時々破ってたけど。第3部は圧倒的でしたな。
そっから朝の4時過ぎまで、ずーっと「桃鉄」。
今回で3回目と初心者な私ではあるけれど、このゲームに関してはひとつ自信を持って言えることがある。
それは、「どんなひどい状況になっても、結構なんとかなる」というものだ。
このゲームはキングボンビーに代表される様々な妨害が用意されており、重なると実に恐ろしい負債額になってしまったりするのだが、あんまり気にしなくてもいいんじゃないかと思う。
ワープポイントを通るとプラスもマイナスもなく持ち金が0になる、とか徳政令カードとかの救済策もそうだけど、何よりプログラムのレベルでバランスを取るように設計されてると思うのだ。
借金大王のプレイヤーにボンビーがついても、まずキングボンビーに成長することはないし、借金の多いプレイヤーがカードを引けば、かなりの確率で徳政令カードが出る。最初は偶然かと思ったけど、あまりにも「それ、出来すぎ」って場面が続き過ぎるのだ。
ゲームバランス、と言ってしまえばそれまでだが。
この手のゲームをやるのは、そのほとんどがライトユーザーであろう。
その手の連中は、ゲームの中に苦境があることを望まない。それどころか、「苦境がある=クソゲー」という認識である。苦境を乗り越えるためにすべてを振り絞るからこそのゲームだろ?ってな我々マニアたちとは大きく異なる。彼らが欲しいのは、制御された危険である。
そんな連中が買い支えて、何作も続編が出てるようなゲームが、そんなシビアな訳がないではないか。
ヌルいと言えばヌルいが、そんなゲームもありだと思うし、みんなで遊ぶのは文句なしに楽しい。
だから、私は桃鉄やってて何が起きても、さほど動揺しない。
今回なぞはキングボンビー星に連れ去られたが、どうということはない、と思っていた。
出口間違えて2周させられた結果できた借金なんざ、帰ってきてから1年もたたずに完済したぞ。
処分されない畑を中心に物件を買ってたってのもあったけど。
もちろん、他のプレイヤーへの攻撃も容赦しない。
ゴール直前のプレイヤーに、サイコロが6しか出なくなるようなカードで攻撃してやろうと思ったが、対象指定できなかったらしくまったく関係ない奴がひどい目にあったりもしたが、まあそれはそれでご愛敬。
デビル召喚カードをWくんに使ったのも、他意はないのだが。
ターンごとに数千万~数億単位で所持金が減ってくのを見て、みんなでゲラゲラ笑ってたのだけど。
思いの外Wくんは打たれ弱かったらしく、本気で落ち込ませてしまった。
コントローラを放り出し、マンガ読み始めてしまった。操作はCPU任せ。
あちゃー。
他人のボンビー変身シーンでは、ちびボンビーから突然キングボンビーに変化するときの爆発音を何度も口まねして脅してたくせになー。
「人を呪わば穴二つ」って知らんのか。
デビルが離れ、借金が無くなったら復帰してきたけど。
何だかなー。
明け方近くなり、全員意識がもうろうとしてきたので適当なとこで終了。
今回も私は2位でひた。農林王の称号を頂戴いたしますた。
1位はZくん。ダントツでした。2位の私と資産が一桁違うでやんの。
プログラムでバランス取るのは、上方にはあんまり適用されないのかな?
「のんT、またマンガ借りてっていいですか」
とKくん。ええよ、と答える。
マンガは隣の部屋に山積みで、何がどこにあるか、正直私もよくわからん。
二人であちこちの山をゴソゴソやってると、ZくんもWくんも、マンガ部屋の方にやってくる。
本棚の上に置いてある、プラモデルの箱を見たWくん。
「戦闘メカ、ザブングル・・・・・・・ああ、ガンダムか」
「フザケんなてめぇ、表に出ろっ!」
明け方で眠いから、理性のタガが実に緩い。だがしかし、この間違いを許すわけにはいかない。
バナナを見て「ああ、レモンか」と言ったのに等しい野蛮な言動である。
「え、違うの?あ、なんか書いてある・・・ウォーキング・マシン」
「ウォーカー・マシンだバカたれ!」
「え、ああ、ウォーキング・マシンね」
「直ってないぞド阿呆」
「え、違うの?ウォーキング・・・」
年寄りとかだとさあ、細かい違いとか全然分かんないことって、あるんだよね。
ウルトラホーク1号が欲しかったのに、ウルトラホーク3号買ってきちゃって子供に泣かれるとかさ。
でも、キミ、俺よりずっと若いだろ?
箱に書いてあんの、英語だよ?君、受験生だろ?
もう、いいや。言っちゃえ。
「君さぁ、獣医、向いてないよ」
「ええ!どうしてですか?」
「だってさあ、細かいとこ、全然見てないじゃん」
「見てますよ!」
「見てねぇよ。さっきだってさ、飾ってあったガチャポンのガンタンク、あんな細い部品してるのに、腕ボキボキボキって回したよね?あれ、折れるぜ?ついでに言うと、貰ったもんだぜ?折れたら、って考えてなかったでしょ?」
「大丈夫だったじゃないですか」
「そら結果的にな。危険を想定した上でやるのと、気付かずにやるのとじゃ全然違うぜ。小動物なんか、すぐに死ぬんだよ?」
「大丈夫ですよ」
「・・・・もうイイデス」
今にして思えば、牛や馬相手なら似合うのかもー。
てか、彼に限ったことじゃないけど、根拠のない自信って苦手だなあ。
あたしゃ根本的に自信のない生き物だから、これでもか、これでもか、って準備しないと不安なんだよなー。経験的に、策は3重に用意して、最後の一つでやっと成功するかどうかだと思うんだけど。
そう言えば、模試の結果見せに来てくれた時も同じようなことを感じたんだっけ。
「これぐらい取れてればまあ大丈夫、油断しなければ」
って言う彼に対して、
「そうかな。想定される合格ラインをぶっちぎって、もっと高いレベルにいないとダメなんじゃないの?」
と言う私。最後まで今ひとつ通じてない感じがしたんだよなあ。
受験って勝負事に関しては経験値高いつもりなんだけどなあ(もちろん失敗も多いが)。この辺の言説に、説得力を持たせきれていない。
いやまあ、そういう奴は負けさせるのが一番だし、一度しっかり負けて、それからどうするか、ってのが大事なんだろうね。いい大人でもちゃんと負けてない奴ぁ山ほどいるけど。
翌日のお仕事、昼からとは言え、大層辛うございました。
久々にウチまでたどり着けず、でっかい本屋の駐車場で2時間も眠りこんでたよ。
塾講師のお仕事、お休み貰ってて良かったー。
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