秋口から短期で受け持っていたとある専門学校での授業が終わった。
成績をつけるとか、色々細かい仕事は残っているのだが、学生さんの前に出ることはもうない訳で。
受け持った授業のうち一つは、自分で興味を持ったテーマについて調査し、パワーポイントでスライドを作って大勢の前で発表する、というもの。
担当する私がボンクラでグータラなのでお世辞にも順調な調査ではなかったのだが、担任の先生が学生さんたちに発破をかけてくれたお陰もあり、とても素晴らしい発表会になった。
いやもちろん、突っ込みどころも多いし、質問へ答えられなくなって「えー・・・今後の調査に・・・」って答えるやつ続出だったんだけど。いやまあ、そらオレの責任か。
ともあれ、その学校ともお別れ。
書類のやり取りぐらいはあるだろうけど、何かお呼びがかからん限り、これでおしまい。
ちょっぴりおセンチな気持ちで帰る。
時刻はお昼休み。
発表という重圧からの解放、翌日から始まる(最後の)冬休み、単純に食事への喜び、そんなもので玄関ホールは和やかな空気に満たされていた。
「あー、センセー、さよならー!」
「おつかれでーす」
「さよならー!」
顔見知りになった学生さんが声をかけてくれる。
あまりにもいつも通りだったんで、こいつら、もう二度と会わねぇってことわかってんのかな、とか思う。
気づいてないってのもあるだろうし、鴻上尚史がどっかで書いてたみたいに、二度と無いことを知るのが歳を取ったということなのかもしれない。
わざわざそれを言うのもアレだし、でも何も言わないのもアレだし。
ちょっとぐらいいつもと違うこと言ってお別れしたいわね。
「はーい、それでは皆様、よいお年を!」
鳩が豆鉄砲喰らったような顔をする学生さんたち。
「そっか!もう休みだ!」
「おお!」
「先生もよいお年を!」
にゃはは、してやったり。
玄関ホールはさらに楽しそうな雰囲気になる。
だがしかし、いつの時代にも、どんな場所にも、挑まれると後には引けない人は存在する。
誰かが何か洒落たこと言ったなら、それと同じかそれ以上に洒落たことを言わねば気が済まない、そんなヤツ。
「先生!えーとえーと・・・」
にやにやしながら、次の言葉を待つ。
「お幸せに!」
ちょっとずっこけた。
いや別に、結婚するわけでもなんでもないのですが。
でもまあ、よい言葉ですな!
あたしゃ十分幸せですが、さらなる幸せを祈ることも良いことでしょう。
自分に対しても、誰か他の人に対しても。
んではマネして。
末長くお幸せに!
PR