大好きな御手洗シリーズではなかったんだけど、脳機能やその関連の障害について言及していたので購入。
学生さんにお薦めしてもいいかも。
この本に書いてあることだけ読めば大体分かる、というのは流石に無理だと思うけど、基本的な知識がある人が読むと面白いんじゃないだろうか。
少なくともあたしゃ楽しめました。
この本には中編が2作収録されている。
標題になってる方はアスペルガー障害がテーマで、もう一本の方「ヘルター・スケルター」は脳機能と感情、衝動、行動の関連。
前者は臓器移植とクローンについても言及しており、仕事の都合上ちょいと調べなきゃいけない事情があったのでよいタイミングでしたわ。うん、あとは裏さえしっかり取っておけば十分かな。この本のおかげで楽できたかもー。
テーマになってる障害についてはどうなのかな。
ものすごく幅の広い概念だってのもあるけれど、この作品だけでは概要をつかむのは難しいんじゃないかな。
いやまあ、もちろんそれを目的としているわけではないのだから、それはそれでいいのか。
逆に、この障害について何の知識もなければ、「なんだこの登場人物は。変なヤツ。作者が下手なのか?」とか思われそう。
必要な情報は最低限作中に書かれてはいるのだけどね。読み流されてないかな、とかいらん心配をしてみる。
ネタバレになるからあんまり詳しくは書かないけど、島田氏のデビュー2作目をちょっと思い出した。
後者は記憶喪失の患者と医者の会話からなるお話。
いやはや、脳ってなぁ面白いねぇ。
どこまでが実際に明らかになってるところでどこからが創作なのか、その区別ができるほどの知識があればもっと面白いのかも。大して知識のない私でも楽しめましたが。
てか、これ読んでると自分らの仕事ってこの先どんどんなくなってくんじゃないかと思った。
科学ってなぁすごいもんですな。
古典的な臨床系の理論がちょっとアレに見えてきますわ。
何人かのお医者さんが我々心理屋に「精神医学の知識を身につけたほうがいいよ」ってどっかで書いてたけど、納得だわ。
それなりに精神医学をかじってきたから「あー、なるほどね、あの話がこう発展してるんだ」って理解できるけど、ガッコ出たての頃なら絶対投げ出してたと思うな。
脳の機能ってレベルで人の行動をとらえる考え方ってのは、心理屋の業界では間違いなく傍流だと思う。けど、心理主義では百年かけても辿りつけないところに一瞬で届くこともできるんじゃないのかな。
その辺のことを知ってるかどうか、ってのがこの先大事になってくるんじゃないのかなぁ。
勉強しようっと。
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