ある日、生徒の一人にこんなことを言われた。
「先生は、何言ってもエグイよね」
はて。
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確かに、同じ塾のどの先生よりもよく叱るし、時には口汚く罵ったりもする。
反抗的な生徒には、実力行為も辞さない、こともない。
以前は試験明けの打ち上げのときなんかにキックミットを持たせて、蹴りとはこういうものでゴザルよ、と数人まとめて吹っ飛ばしたりもしたけれど、最近の生徒さんは概ねおとなしいのでそこまでする機会はあんまりない。
たいていは、ちょっとだけ打ち気を見せて、にじり寄ってくだけで・・・それはさておき。
大人気ない物言いも多々するが、あくまでそれは芸である。
嘘ではない。
餓鬼みたいなこと言うやつには、より餓鬼な物言いで言いくるめる。
言わば「毒を以って毒を制する」といった類のものだ。
いやいや、決して私が大人気ないというわけではない。
きょとん、としてると別の生徒がニヤニヤしながら口を挟む。
「先生が言うとねぇ、リアリティがあるんだよ。本当にそうなりそうな気がしてくるのさー」
あー、そういうことか。
それなら納得。
だって、そういう話し方してるもん。
世に言うところの「言霊」ってヤツ。
別に誰に習ったとか、何かの本で読んだとか、そいうのじゃなく、普段の生活の中で見つけたもの。
技術というほど確立したものでもないし、どちらかというと単に「心がけ」程度の話なんだけど。
心の底からそう思って、それから口に出すと、言葉には力が乗るよ。
当たり前と言えば当たり前、って程度の話なんだけどね。
何年か前、多分、塾講師始めてすぐのころだったと思う。
ある生徒さんが、こんな質問をしてきた。
「先生、『希望』の反対って、何?」
今となっては何を考えてたのかよく覚えてないのだけれど、その時は世の中のすべてがもーどうでもいいや、うんざりだ、消えちまえーとかそんな、投げやりな気持ちになっていたのは間違いない。
質問の答えなんざ、考えるまでもなく頭に浮かんできたので、その気持ちのまま答えを口にした。
「・・・絶望」
大きな声で言ったわけでもないのに、その途端、ざわついてた教室が一瞬ではあるが「しーん」と静まり返った。
あれ、なんだ?と思った次の瞬間には教室は皆の笑い声に包まれていた。
きょとんとしてる私に、生徒たちやほかの先生たちが口々に
「いや、今の絶望はホントに絶望してた」
「何か、重々しかった」
とか何とか言ってくるではないか。
その場での話はそれでお終い。
皆はすぐにそんなことも忘れ、それぞれの勉強やら採点やらに集中して行った。
けれど、当の本人はそう簡単に忘れられなかった。
口から出た言葉に、いつもと全然違う感触があったこと、周りがびっくりするくらいそれに反応したこと。
いったい何だというのか?
いつもと違う条件があるとすれば、内面と発した言葉の一致ぐらい。
だとすれば、それが理由なんだろう。
面白いな、と思った。
こりゃ、アレじゃないか。
ファンタジーの古典、名作の誉れが高かった割に、映画化して大ゴケしたあれ。
映画版にはあまり興味はないけど、原作の第一部は面白いよ。
あれに出てくる「まことの言葉」みたいじゃないか。
あるいは、毎回レンガみたいな厚さでうんちくたっぷりの小説の主人公、眩暈坂を登ったところにある古書店の店主にして黒衣の拝み屋がやる、憑き物落としみたいじゃないか。
あ、同じ作者が何作目かのアニメ版「鬼太郎」にゲスト出演した時のキャラクター(確かおんなじ名前の腹話術士がいたと思う)の方が、イメージに合うかも。
いや、どれもこれも私自身のキャラとはかけ離れているのだけれど。
そんな風になれたらいいな、と思ったのだ。
言葉ひとつで世界の在り様を変えてしまいかねないような、そんな力を持つ人。
魔術師、と口にすると大変小っ恥ずかしい存在なのだけど。
それ以来、別に特訓をしたりはしてないけれど、折に触れ言葉に気持ちを載せる練習を思い出したように繰り返してはいた。
何となく、効果は出てきたの、かな?
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無題
2007/09/11(Tue)16:38
前・向・き・な・発・言・に言霊を乗せてください。
どうしても言いたかったんだああああ!!!
それを誰にも止められなかったんだあ。
ハッ、おい、誰だ、し、刺客か?
やめろ、何をするぅぅ!(連れ去られr
No.1|by 三竜|
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