ちょっとやんちゃな(婉曲表現)中学生男子に、徒競争を挑まれた。
「君、スリッパじゃん。勝負にならんよ。ほら、逃げてみ?」
3歩で追い込んだ。
「じゃあ、オレ、スリッパ脱ぐよ!」
人気のない放課後の校舎。
職員室横の数十メートルの直線廊下。
後で文句言われないように、一歩下がってスタートしてやることにする。
「いちについて、用意、ドン!」
少年が走り出したのを確認してから、スタートする。
どだだだだだだだ
10メートルも行かないうちに抜き去る。
背後の足音が少しずつ遠ざかる。
おろしたての上靴ががふがふしてるのが気になるが、まだ加速できる。
止めていた息を、少しずつ吐き出す。
「シイィィィィィィィ!」
フルコン系にはお馴染みの、少しギアを上げたときに出る、歯と歯の間から息が漏れる音。
これをやる度に、アンデルセン神父みたいだよな、とか思う。
腿に力がみなぎる。
まだだ。
まだ加速できる。
ふはは、少年よ、これが大人げない大人の力だ!
・・・あれ、腿が上がらなくなってきた。
靴の中で、足がずれる。
んむ、前に、足が、出な・・・・・
ごん
どん
ざーーーーーーーーっ
コケました。
思いっきり。
すっ転んで、その勢いのまま廊下をスライディング。
少年に圧倒的な差をつけたままゴール。
いやもー、少年には散々笑われましたとも。
「まるで赤ちゃんみたいな転び方だ!!!」
いや少年、君は正しい。
足を出そうとして、出せずにコケる。
これは歩き始めたばかりのちっちゃな子どものコケ方だ。
うう、腰痛になって以来の2か月ほどで、思ってた以上に衰えてたみたいッス。
鍛え直さにゃ。
「今日から、”コケさん”って呼んでやる!」
なんじゃそりゃ。
後で見てみたら、ズボンの膝のあたりにでっかい穴が。
スライディングしたときに、熱で溶けたらしい。
中学生か、オレは。
当て布見つからなかったら、スーツひとつおしゃか、ってこと?
ひぃ。
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