塾の生徒がちっちゃなカイロを持ってきていた。
いきなり話がずれるがカイロはそもそも懐炉って書いて、薬局で買ってきたベンジンを入れて燃やすタイプのものが当たり前で、今普及してるのは化学カイロあるいは使い捨てカイロとか言うべきであって・・・
まあそりゃどうでもいいか。
私が働いてる塾はかなり人口密度が高いので、冬でもかなり暑かったりするのだが。
「あれ、寒い?」
「ハイ、足もとが」
「ふーん。家近いんだし、そんなちっこいの大事に抱えてるくらいなら湯たんぽ持ってくれば?ペットボトルにお湯入れてさ、タオルでも巻いときゃ、さ」
ま、冗談半分である。
何言ってんですかセンセー、ぐらいのリアクションを期待していたのだが。
「私・・・」
何か、微妙に深刻そうな顔してるんですが。
「私、水を見るとやる気がなくなるんです!」
「はい?」
何を言い出すので?
「だから湯たんぽ持って勉強はできないんです」
「・・・・・・・・へぇ・・・・・」
いやまあ、ソウデスカ。
周囲の生徒も、「え?」って顔して成り行きを見てる。
「私・・・」
まだ何かあるんデスカ?
「私、赤いもの見てないと、やる気が出ないんですよ!」
いや、そんな一大決心したかのような顔で、高らかに宣言しなくても。
「お前はアレか、バッファローか!」
突っ込みを入れる生徒。
いや、それを言うなら闘牛だろう。バッファローは闘牛には使わないし。
「それ以前に変だろう!」
「何言ってるの?」
「お前変だ」
騒然とする教室。
「だからほら、いつも赤いものを筆箱に入れてるんです」
いや、そこじゃなくてさ。
職業柄、それなりに色んな人に会ってきたつもりだけど、そういう主張する人には初めて会ったなあ。
水へのこだわりとか、古典的な精神分析の人が聞いたら大喜びしそうなネタではあるわな。
分析苦手だから、私は言及しないけど。
当のご本人、周囲が自分の言動を変だと思ってる、ということにようやく気付いた様子。
「ええっ!どうして!?私、普通のこと言ってるだけなのに!!」
えーと。
斯様に、ホントに変な人は自分のことを心の底から「フツーだ」と信じて疑わないものなのでアリマスな。
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